私を包む,不器用で甘い溺愛。


俺はふるふると握った拳を落ち着けた。

本当に,何て生意気な。

言う必要なんてないさ,だって彼女自力で気付いてんもんな。

べっと舌を出す。



「変な顔なんかしちゃって,どうしたんですか?」

「うっせ。余計なお世話だっつーの」



ずるっとコケて見せると



「また反応が古いですよ」



と余計なツッコミを入れられた。

こほんと咳払いをして見せる。




「ほら,ライヴァルのいないうちにアプローチしてきたらどうです? ありすもその内俺の事なんて忘れるでしょうし」



両手のピースをくいくいと曲げてみせる榛名。

本気でそう思っているその様子に無性に腹が立った。

有栖が自分に,その内構わなくなると思ってやがる。
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