私を包む,不器用で甘い溺愛。



「私の気持ちは,私のものよ。もしそんなこと言うくらい迷惑なら,最初からそう言えばいいの。告白もしてないのにフラれたからって,私,榛名くんのこと恨んだりしないのに」



頑張って,諦める努力をするわ。

折り合いをつけて,ごめんねって初恋に手を振るわ。

なのに,どうして



「私,榛名くんのことがす────」



ぎゅうっと,頭ごと抱えるように抱き締められる。

ほ……と息を吐き出した時には,涙は全て下目蓋に溜まっていた。

スツ……と一直線に落ちていく。

榛名くんの服にも,少し染みた。

……え?



「ありす」

「ぅ,え? はい,な,なあに? 榛名くん」



この状態じゃないといけないのかしら。

恥ずかしくて,榛名くんの服が汚れちゃわないか心配で。

分かっているわ,この包容に深い意味なんてないこと。

私がみっともなく泣いてしまったから,隠して,慰めてくれただけなんだって。

だから……

トンッと胸板を押すと,それでも離れない。

もぞもぞと苦しくなりながら上を向くと,もっと強く抱き締められた。
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