私を包む,不器用で甘い溺愛。
エピローグ
放課後。
「甚平くん,ごめんなさい。私から呼んだのに,私の方が遅くって」
今日じゃなくちゃと,すずちゃんに時期に来るであろう榛名くんへの伝言を言付けて,私は甚平くんに話があると声をかけていた。
彼が想いを告げてくれた,人の気配の無いこの場所に。
それなのに,帰りの支度に時間がかかり,またあの日のように甚平くんを待たせている。
あまりの申し訳なさに謝ると,彼は笑って許してくれた。
「有栖。いいんだよ俺は。ちょっと待ってるくらいが,丁度いいんです」
「……ありがとう」
やっぱり優しいのよ,彼は。
「実は俺,何を言われるか分かってます。榛名くんとお付き合いすることになりました。でしょう? あんな騒がしい教室でする話でもねぇもんな」
ぽりぽりと頬をかく彼の目線は,少し斜め上。
壁に持たれたまま,壁に付けた片足をずり……と少し下げる。
「え,ええ。半分,あたりです」