私を包む,不器用で甘い溺愛。
「半分?」
「はい,私,ただお礼が言いたくて。最初は私,とても驚いたけど……何度も好きだと行動して貰えて,いつも優しくして心配して貰えて,本当に……嬉しかったんです」
終わっている話に,迷惑かもしれないと思った。
だけどまだ終わらせたくはなくて,連絡先も知らない私は呼び止める他に無かった。
私にとてもよくしてくれていた甚平くんにだけは,ちゃんと伝えたいと自己満足だけれど思う。
「お礼…………俺,有栖が思うよりも全然いいやつじゃないよ」
自嘲気味に落とされた言葉に,私は驚いて首をブンブンと横にふった。
長い髪が,バサリと揺れる。
「まさか! 私,自分が告白を受ける前だって,甚平くんの人となりに何度も助けられて来たんです」
すずちゃんがいない時,私はどうしたってうじうじと人前でちゃんとしてはいられなくて。
せっかく珍しく1人だって話しかけて貰えても,上手く返すことが出来なかった。
そんな時に,何度も彼は私をクラスメートに繋いでくれたんだ。
今,クラスで私が浮かないでいられるのは,全部。
すずちゃんと……甚平くんのお陰なの。
「俺,君の役に立ててた……? ……あー,悔しいのに,嬉しい。何て言うんだろう,こんな感情。……ねぇ,来栖さん」
「はい?」
「3秒でいいから,最後に抱き締めさせて貰ってもいい? それとも,他の男じゃ,嫌?」
「い,いやだなんて」