私を包む,不器用で甘い溺愛。
「今度こそ! 君と本当の友達になりたい。すっかり君の事なんて諦めて,俺は次の恋を探しマス。だから,榛名と付き合ったって俺のこと忘れないでくれよ!」
「ええ! 是非! 私だってあなたと疎遠にはなりたくないもの! 本当に,ありがとう,甚平くん……!」
「何がありがとうなのありす。本当に,さいっごまで図々しい人ですよ」
「榛名くん?」
「はいはい,もう行こうありす。俺達初の放課後デートだよ」
ごめんね。
すっかり拗ねてしまった彼に謝って,私も爪先を前へと向けた。
かっこいいのに可愛くて,なんだかとてもずるい,大人の人みたいな後輩。
そんな彼が今はもう,私だけをみて,私の腕を引いている。
「私,食べてみたいものがあったの」
「じゃあそこから寄ろうか。……ありす」
「なあに?」
「好きだよ。……ははっ赤くなった」
「~っもうっ! いじわるしないでよ! だってそんなに何度も言うもんじゃないわ!」
「でも俺達,恋人なんでしょう? ほら,ありすは?」
オレンジ色の空。
仲良く重なる影が揺れ
「すきよ,榛名くんのこと」
恥じらいを混ぜた,小さな必死の呟きが……溶けた───