迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。

その後、真紀が殴った男は痴漢の常習犯だったことがわかり、真紀の暴力も厳重注意で警察から帰ることが出来た。


家に着いた私達はソファーにそれぞれ無言で座った。

すると突然、真紀が玲也と私に頭を下げたのだ。

「お兄様、唯さん、…ごめんなさい。」

少し時間をおいて玲也が口を開いた。

「真紀、お前の話も聞かずに殴って悪かったな。」

真紀は玲也の言葉を聞いて、大きな瞳に溢れそうな涙を溜めていた。

私も思わず真紀に声を掛けた。

「真紀ちゃんが怪我をしなくてよかったですね。…もう危ない事をしないでくださいね。お兄様が心配しますから。」

すると真紀は小さな声で話し始めた。

「唯さん、いろいろと意地悪を言ってごめんなさい…お兄様が取られるような気がして悔しかったの…本当にごめんなさい。」

真紀は私に向かって頭を下げたのだった。
玲也はそっと真紀に近寄り、横から真紀を抱き締めた。

真紀はさらに涙を溢れさせていた。

「真紀、俺はずっとずっとこれからも真紀のお兄ちゃんだ。安心しろ。」

私も二人を見ながら目頭が熱くなった。
玲也のような兄が私にもいたらよかったのにと思ってしまう。


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