迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
秘密の日常が始まった
白皙の美青年である蓮、そして大人の色気が駄々洩れの美男子である玲也。
災難からの偶然ではあるが、こんな美しい兄弟と出会ったことはない。
そして、見ず知らずの人の家に泊まらせてもらうのも初めてだ。
私の頭の中はもうパニックで処理が追い付かない。
無意識に考えることはもうやめていたようだ。
そして、いつしか私は夢を見ていた。
どこか救われた気持ちになっていたのだろう。不謹慎ではあるが、気持ちは楽になっていた。
夢の中に、大好きだった姉が出て来たのだ。
姉は微笑んで何かを言っている。言葉は聞こえないが、何かを言いながら笑顔でうなづいて居るのだ。
まるで、『良かったね』と嬉しそうな表情にも見えるのだ。
「待って!行かないで!お姉ちゃん!」
大きな自分の叫び声で目が覚めた。
姉が夢の中で手を振って消えてしまったのだ。
「夢だったんだ…。」
私は小さな声で呟きながら、ゆっくりと起き上がった。
笑顔の姉は、私の気持ちなのだろうか。
辺りを見回すと、ここは蓮が昨日連れて来てくれた兄の玲也の家だ。
私は窓に近づきカーテンを開けた。
朝日に照らされた美しい街が視界に飛び込んでくる。
昨夜は夜のため見えなかったが、高層階からの景色はかなり遠くまで見渡せる壮大な景観なのだ。
遠くには富士山と思われる山も見えている。
「すごい!遠くのビルや富士山まで見える!」
本来なら落ち込んで朝を迎えるはずの状況だが、なんだか少し浮かれている気分になってしまう。
私はフルフルと顔を左右に振って冷静を装うと、ドアを開けて部屋を出た。
すると、パンの焼ける香りだろうか、香ばしい匂いが部屋に充満していた。