迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
私の名前は、花宮 唯(はなみや ゆい)、24歳。
小さい頃から憧れていた化粧品会社に入社して3年目。
…私はどうしてもこの会社に入社したかったのだ。
私には年の離れた姉がいた。
いる…ではなく、いたのだ。
姉はとても美しく幼い頃から私と違って成績も優秀、まさに才色兼備という言葉がぴったりの女性だった。
私は美しく優しい姉が大好きだった。
憧れの存在だった姉に近づきたくて、いつも後ろを追いかけていたのだ。
「お姉ちゃん、私もいつかお姉ちゃんみたいな美人さんになりたい。」
「大丈夫よ、唯ちゃんはきっと素敵なレディーになって、いつか王子様が迎えに来てくれるわ。」
しかし私が15歳の夏、心が張り裂けるような事件が起きてしまった。
それは突然の出来事だった。
高校に行っていた私に緊急連絡が入り、駆けつけた病院で見た姉は、白い布を被っており、いつもの優しい微笑はもうそこには無かったのだ。
姉はスピード出し過ぎた車に撥ねられて、帰らぬ人となってしまった。
その姉がいつも付けていた口紅が、今では大切な形見となり私のお守りとなっている。
…その口紅は、ブラックローズ社の深紅の口紅。
いつか自分もこの口紅が似合う女性になりたかった。
それから数年後、私は憧れのブラックローズ社に入社したのだ。