迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
「営業事務の仕事は、営業の人が必要とする資料を集めたり、見積もりをつくったり、プレゼン資料の作成とかデータ分析など多岐に渡ります。まずは、簡単なところで見積もりから作ってみましょうか。」
私が仕事の説明を始めると、花はじっと私の顔を見つめている。
なにか、探りを入れられているようで落ち着かない。
蓮は平然としながら、熱心に話を聞いていた。
一通り説明が終わった時だった、花は唯に向かって質問した。
「花宮先輩、仕事の説明はよく分かりました。別件でお伺いしてよいですか?」
「え…ええ、何か質問でも?」
「花宮先輩は、さっき私達を見て驚いた顔をしていましたよね…何かあるのですか?」
急な花の質問に言葉が出ない。
何と言えばよいのだろうか。
「そ…そうかな…そう見えた?」
すると、それまで何も言わなかった蓮が口を開いた。
「僕は花宮先輩の上の階に住んでいたんだ。だから僕も先輩の顔を見たことがある。それで花宮先輩は驚いたのですよね。」
「う…うん。そうなの。少し驚いただけ。」
蓮に助けられた。
考えてみれば、蓮がCEOの弟だとは誰も知らない。
蓮と顔見知りでも問題は何もないのだ。
しかし、花はなぜか不服そうな顔をしていた。