迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
いろいろと驚くようなことはあったが、無事に今日の仕事も終わろうとしている。
「花宮先輩、お先に失礼します。」
「…失礼します。」
蓮と花は、唯に向かって挨拶をした。
インターンへの説明に思いのほか時間を取られてしまった。
そのため、自分の仕事を終らせようと急いでデスクに座った時だった。
後ろから誰かが私に話し掛けたのだ。
「今年のインターンはどんな子たちでしたか?」
私はてっきり営業課のマネージャーだと思い、話しながらゆっくり振り返った。
「とても熱心に話は聞いていましたし…とても優秀な…っえ…え。」
私は話の途中で言葉を詰まらせた。
振り返ったところに居たのは、マネージャーでは無かったのだ。
なんと、そこに居たのは…玲也ではないか。
「れい…いいや…橘CEO…し…失礼いたしました。」
CEOである玲也の登場に営業部全員がざわめいている。
「今日から我が社にインターンが来ていると聞いたから、ちょっと見に来ただけなんだ。驚かせて悪かった。」
玲也は涼しい顔で話をしているが、唯は心臓が口から出そうなくらいドキドキしている。
蓮がインターンで来たことで、玲也がこの会社のCEOとわかってはいたが、こうやって本人を前にすると、現実味を増して緊張する。
玲也はそれだけを言うと、微笑を浮べて歩き出した。
慌てている私に対して、玲也は余裕の表情だ。
玲也が営業部から出て行くと、その様子を見ていた女子社員が私に向かって一斉に駆け寄って来た。
「…花宮さん!橘CEOと話ししていたよね!!」
「羨ましい!あんなに近くでCEOに見られて…ずるいよ!」
「なんで、花宮さんなの?私もインターンの担当になりたかったよ。」
分ってはいたが、それにしても、玲也はすごい人気だ。
確かに、あれだけのルックスと社会的地位も兼ね備えているのだから当然かもしれない。
ますます、とんでもない人の家に居候になっていることを痛感した。