迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
「ただいま、唯ちゃん。今日は突然驚かしてごめんね。」
玲也が帰って来た。
すると、出迎えた私は前に立ち真面目な表情をする。
「玲也さん、お話があります。」
「…どうしたの?…もしかして、怒ってる?」
「できれば、今日のように平社員の私なんかに、話し掛けないで欲しいのです。」
私の申し出に玲也は不思議そうな顔をする。
「…唯ちゃん、黙っていたことは謝るけど、何を怒っているの?」
「玲也さんは、ご自身では感じていらっしゃらないかも知れませんが、私達からしてみたら、玲也さんは雲の上の存在と言うか…話すことだけでも恐れ多いというか…なにしろ、皆が変に思うので、会社では絶対に話し掛けないで欲しいのです。」
少しの間沈黙した玲也だが、ゆっくりと話し始める。
「…唯ちゃんが迷惑と言うなら、そうするよ。…でも会社を出たら、僕のことを上司だと思わないで、今まで通りに接して欲しい。…駄目かな?」
玲也との話し合いで、社内ではできる限り知らない振りをする。
しかし、会社を一歩出たら、上司としてではなく、普通に接する約束をした。
秘密の関係が始まったのだ。