迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。


直人と部長は、それぞれ販売機で飲み物を購入するとそのまま戻って行った。

柱に隠れていた私の頬には、温かいものが知らないうちに流れていた。
缶コーヒーを握っている両手もなぜか小さく震えている。

直人が私に別れをつげた理由がよく分かった。
しかし、いくらマネージャーにしてもらえるからと言って、簡単に別れを言ってきた直人。
私に対してその程度の想いだったのだと理解した。
付き合ってはいたが、私の片思いだったのだ。

直人にとっては、別れるきっかけがあって、かえって良かったのかも知れない。

頭では理解できていても、気持ちはそんなに簡単に整理が出来ないものだ。

堪えきれない涙が止めどなく流れ落ちる。
私はそのまま柱の陰にしゃがみ込み、涙が止まるのを待つしかなかった。

なんとなく始まった交際だったけれど、私は直人を愛していた。

しかし、その想いは一歩通行だったとはっきりわかってしまった。



< 41 / 110 >

この作品をシェア

pagetop