迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。

玲也と約束してしまった以上、約束は守るつもりだ。
玲也には住むところもお世話になっているし、恩もある。

しかし、簡単に引き受けてしまったが、玲也はこのブラックローズ社のCEOなのだ。
それだけではない、誰もが振り返るような眉目秀麗な男性だ。

私なんかが恋人役とは、なんという役不足なのだろうと、つくづく考えてしまう。
仕事の手を止めて、大きく息を吐き出した。

すると、隣に誰かが近づいて来たことに気が付き、その方向を見た。

そこに居たのは、直人だった。

直人は無言で私の隣の椅子に座ると、静かに話し始めたのだ。

「唯…いいや…花宮さん。君には本当に悪い事をしたと思っている。だから、こんな男の言う事は信用ならないかも知れないが、それでも、君が心配なんだ。」

今さら直人に心配なんてされたくない。これ以上みじめな気持ちになりたくない。

「…心配？…悪いけど、私にはもう関らないで…部長のお嬢様が心配するよ。もう誤解されたくないしね。」

「うん。…君のいう事はよく分かっている。でも、君はCEOに利用されているのではないのか？あの人には婚約者がいるって噂だぞ。」

「全部知っているわ。…だからもう…私に話し掛けないで！！」