迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
私の気持ち
それから一週間が経ち、今日は結婚式と同窓会にお呼ばれしている日だ。
土曜日だが、玲也は仕事のようで朝早くから家を出ていた。
今日のために頑張ったダイエットの成果なのか、玲也に買ってもらったパーティー用のドレスも、試着の時より綺麗なシルエットになった気がする。
思わず考えてしまうのは、買ってくれた本人に一番に見せたかったという事だ。
自分で考えながら、顔をフルフルと左右に振った。
「私ったら、何を考えているの!あくまでも玲也さんは偽装の恋人なんだから、誤解しちゃだめだよ。」
自分に言い聞かせるように声を出した。
結婚式と同窓会の会場は、海の見える今話題のホテルだ。
確か有名な建築家が設計したホテルで、和のテイストを感じるように作られているのが特徴だ。
ロビーに入ると、その高い天井は木造で、梁見せ天井というのだろうか、圧迫感が無く開放感のある空間が広がっている。
深呼吸をすると、木の香りが心地よく感じる。
建物のすばらしさに感動して、天井を見上げていると、遠くから私の名前を呼ぶ女性達の声が聞こえて来た。
「ゆーい、唯ちゃん。」
「唯ちゃんでしょ?」
声の方をみると、そこには懐かしい学生時代の親友が二人、笑顔で手を振りながら近づいて来た。
「杏ちゃん、なっちゃん、久しぶりだね。」
高校時代の親友、森野杏と川野夏子だ。
この二人とは、よく学校帰りに遊びに出かけたり、一緒に勉強したり沢山の思い出がいっぱいだ。
二人は同じ大学に進み、私だけが別の大学になってしまったため、会うのはもう何年振りか分からないほどだ。
「唯ちゃん、かわらないねーって言いたいけど、綺麗になったね。」
「そうそう、なんだか女らしくなったよ。」
なんだか二人に褒められるとくすぐったい気分だ。
さらに二人は私の顔を覗き込んだ。
「もしかして…唯ちゃん、恋してるんじゃない?」
「素敵な恋人がいるんでしょ?」
恋人が居るのは事実だけれど、恋はしていない。
どう伝えればよいのだろう。
「えっ…ええとね、恋人は居るの…でも恋はしていない…かも…」
二人は怪訝な表情をする。確かに私は変な事を言っている自覚はある。
「ごめん…ちょっと訳があってね…。」