迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
讃美歌が教会の中で心地よく鳴り響いている。
白で統一された教会は、空気まで澄んでいるようだ。
優しいが緊張感のある張り詰めた空間。
壁画の天使は壁から飛び出し、まるで私達の周りに舞い降りて来るようだ。
「おめでとう!!」
「うわぁー綺麗、おめでとう!」
皆の拍手の中、今日の主役である友人が、父親とバージンロードを歩いて行く。
一歩一歩・・・。
彼女の瞳には美しい涙が溢れている。
心から愛してくれた両親への思いや沢山の想いなのだろうか。
バージンロードは花嫁の人生を表していると言われている。
チャペルの扉が開くのは「花嫁の誕生」、扉から祭壇までの道は「花嫁のこれまでの人生」を意味しているという。
新婦が幼い頃から今までの人生を振り返りながら、新郎の元へ向かう道。
そして正面で待つのは、優しい微笑を浮べた新郎。
愛おしい目で彼女の姿を見つめている。
「うわぁーいいなぁ。私も早く結婚したい~。」
杏ちゃんが頬を赤くしながら新郎新婦を見つめている。
なっちゃんも、うっとりとしながらその姿を見つめていた。
「ねぇ、唯も素敵な恋人がいるなら、早く結婚したいと思わないの?」
杏ちゃんに質問されて、ハッと我に返った。いつしか私もこんな結婚式をしたいと思い浮べてしまったからだ。こともあろうに新郎役は玲也の顔を想像してしまった。
私は自分の頬を軽くパンパンと叩いて、思い浮かべたことを消そうとした。