迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
「それでは、これから結婚披露パーティー&3年A組、同窓会を始めまーす!」
司会をしているのは同じクラスだった真野君だ。
彼は学生時代から面白く、今もサラリーマンのかたわら芸人としても活動しているらしい。
真野君は、当時私が付き合っていた青柳君と親友だったこともあり、よく3人で遊んだりご飯を食べたりしていたので、凄く懐かしい。
司会が一段落すると、真野君が私達に近づいて来た。
「久しぶりだなー。仲良し3人娘。」
すると、杏ちゃんが笑いながら答えた。
「娘と言われると、もう厳しい年齢だよ…。」
そして、真野君は私を見て話し出した。
「唯ちゃん、もう青柳に会った?あいつは自分で会社立ち上げたらしくて、社長なんだって。これは狙い目だぞ。男の俺が見てもいい男になってるよ。」
「そ…そうなんだ。すごいね。」
私の返事を聞いていた杏ちゃんが、もう一度口を開く。
「真野君、唯ちゃんは素敵な恋人がいるらしいよ。いくら青柳君でも無理だと思うよ。」
すると、そこに話題の青柳君が近づいて来た。
真野君の言う通り、以前よりかなり派手な雰囲気になっている。
薄茶色で細身のジャケットとスーツを着て、腕にはギラギラと重そうな高級時計が光っていた。
「よう、みんな元気だったか?久しぶりだなぁ。」
懐かしい笑顔は変わらないが、なぜか真野君が言うほどいい男になったと感じない。
それどころか、何か違和感を感じる。以前のような輝く表情はどこかに行ってしまったようだ。
最近、玲也をみているせいか、高そうなスーツも三流品にみえてしまう。
そんなことを考えていると、青柳君が私の方を向いた。
「…唯、久しぶり…なんか綺麗になったな。振ったのが惜しくなったよ。もう一度俺と付き合わない?彼女にしてやるよ。」
なぜか、自分が私を振ったことになっている事には驚いた。
お互い大学も別で、なかなか会えなくなり自然消滅だったはずだ。
「青柳君、久しぶりに会えて嬉しいけど…なんか雰囲気が変わったね。会社経営しているんだって?さっき聞いたよ…凄いね。…でも、残念だけど…あなたとはもう付き合えそうにない。」
私の断りが気に障ったのか、青柳君は表情をこわばらせて、いきなり私の手首を掴んだ。
恐らく、皆の前で言われたことに腹を立てたのだろう。
「唯、ちょっと二人で話をしないか、こっちに来いよ。」
青柳君は強引に私の手首を掴んでグイグイと引っ張り始めた。
皆は青柳君の勢いに圧倒されて言葉が出ないでいるようだ。
そして、会場から外に出ると、青柳君は私を乱暴に壁に押し付けたのだ。
「唯、お前は俺の事が好きだったんだろ…だからもう一度付き合ってやるって言っているんだ。有難く受け入れろよ。」
壁に押し付けた私の顎をつかみ、青柳君が顔を近づける。
そして、無理やり口づけをしようと私を押さえつけた。
「…いや!!やめてよ!!」
私が何とか彼の口づけを避けようとすると、彼は力づくで私を抑え込もうとする。
(…助けて…玲也…)
心の中で私が助けを呼んだのは、玲也の名前だった。
しかし、ここに玲也が居るはずもない。