迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
そこへ駆け寄って来たのは、杏ちゃんとなっちゃんだ。
「唯ちゃん、大丈夫!どうしたの?」
杏ちゃんとなっちゃんは、突然登場した玲也と瀬谷さんを見て驚いている。
「唯ちゃん、こ…こちらの方は…どちら様?」
玲也はもちろん誰が見ても眉目秀麗だが、瀬谷さんも実はかなりのイケメンなのである。
細い縁の眼鏡の奥に、形よく涼しげな目元がクールで、よくみるとかなり整った目鼻立ちなのだ。
高身長の玲也と並んでも、あまり変わらない身長だ。
すると玲也は、杏ちゃん達に向かって微笑を浮べた。
「ご挨拶が遅くなりましたが、僕は唯ちゃんの恋人で、橘クロード玲也といいます。」
そしてすかさず挨拶を始めたのは瀬谷さんだ。
「私はCEO秘書の瀬谷と言います。本日は突然にお邪魔して申し訳ございません。」
杏ちゃんとなっちゃんは、顔を赤くして、玲也と瀬谷さんを見て固まっている。
驚きで言葉が出ないようだ。
「あの…CEOの秘書って…まさか…橘さん…。」
すると、玲也はクスッと小さく笑った。
「そんなに驚かないでください。…経営者なんて、なにかあれば責任を取らなくてはならない、損な役回りです。」
私達が話をしていると、しばらく黙っていた青柳君が、いきなり横から大きな声をあげた。
「唯…そしてお前たち、俺をこんな目に合わせて、ただで済むと思うなよ…また改めて会いに行くからな…楽しみにしていろよ!」
言葉を吐き捨てるようにして、皆に怒りをぶつけた青柳君は、ゆっくりと向きを変えて歩いて行ってしまった。