迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
少しして部屋のドアが3回ノックされ、部屋に入って来たのは、黒いふかふかの布で作られているようなトレーを持った男性だ。
その男性がそのトレーを机に置くと、そこには光り輝く眩しい程の宝石が付いている指輪が並んでいた。
中でも中央部に置かれたダイヤモンドは周りの指輪を圧倒するように輝いている。
「唯ちゃん、僕はこの指輪にしたいけど、他に気に入ったものはある?」
そう言いながら玲也が選んだ指輪は、周りを圧倒するダイヤの指輪だ。
「あの…私はこんな豪華な指輪は頂けません。」
「これにしようね。」
玲也は私の話を全く聞いていないように、ダイヤの指輪を選んでいた。
そして、試しに私の指につける時、思い出したように動きを止めた。
「本当はこんなところで言うセリフじゃないけど、婚約指輪を渡すときはこの言葉が必要だよね。」
「…っえ?」
私は意味が分からず戸惑っていると、玲也は私の左手を両手で握り、私の顔を真っすぐ見た。
「唯ちゃん、僕と結婚してください。」
なんと、プロポーズの言葉を私に伝えたのだ。
これは偽装の婚約だと分かっていても、真剣な顔で玲也に伝えられると、誤解してしまいそうになる。
「…あの…玲也さん。ありがとうございます。…そんなこと言うと、私は誤解してしまいますよ。」
すると玲也は小さな声でボソッと呟いた。
「僕は本気かも知れないよ。」
何を言ったかよく聞こえず聞き直してみた。
「…今、何か仰いましたか?」
玲也は私の問いにフルフルと首を左右に振った。
「なんでもないよ。」