迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
プライド

芸能人などであれば、記者会見を開いて婚約指輪を見せるところだが、一般人の私達は指輪を皆に見せることなど無い。
しかし、それでは婚約指輪を買って貰った意味が無いと思い、出かけるときや会社の行き帰りに指輪をつけて皆に気づかれるようにした。

そんなある日、仕事が終わりいつも通りに帰る支度をして、忘れず左指に婚約指輪を装着した。
皆に挨拶を済ませて、オフィスの出口へと向かう。

すると、その出口に誰かが立っている。
よく見ると、華やかなワンピースを着た女性と、黒いスーツの男性だ。

私は軽く会釈をして横を通り過ぎようとした時、その女性は私の左手の指輪を見逃さなかった。

「あら~おめでとうございます。ご婚約指輪ですよね?」

「は…はい。どちら様でしょうか?こちらの部署に何かご用事ですか?」

すると、その女性は口角をあげて鋭い目を光らせた。

「こちらに、花宮唯さんという女性はいらっしゃるかしら。」

私は自分の名前が出たことに驚き、目を大きくした。

「花宮は私ですが…なにか…」

言葉を遮るかのように次の言葉が女性から出て来る。

「貴女なのね…泥棒猫さんは。」

「泥棒猫…とは、何のことでしょうか。」

その女性は今までの柔らかい表情を一変させた。


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