迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
その日の夜。
今日も玲也は仕事が忙しいらしく、もうすぐ日付が変ろうとしているが、まだ家には戻っていない。
何度か諦めて寝てしまおうと思ったが、もう少しだけ待ってみようと思う気持ちが勝り、眠い目を擦りながら玲也の帰りを待っていた。
少しして、カチャリとドアのかぎが開けられる音がした。
(玲也さん、帰って来た!)
帰って来た玲也を出迎えようと玄関に向かうと、玲也は私の姿を見て驚いたように目を大きくした。
「唯ちゃん!どうしたの…起きていたのかい?」
「…はい。玲也さんにお話が合って。」
すると、玲也は何か思い出したように話し出した。
「そうだよね。…今日、蓮から連絡を貰って驚いたよ。京子さんが唯ちゃんに会いに行ったんだってね。ごめんね嫌な気持ちにさせただろ?」
私はその言葉に大きく首を横に振った。
「違いますよ。嫌な気持ちにはなりません。京子さんの気持ちになって考えてみれば、いきなり婚約破棄されて、その代わりに他の女性と結婚するなんて言われたら、怒るのは当然です。」
玲也は私の言葉を聞いて、少し気まずいような表情をする。
「…理由は以前にも唯ちゃんに話したよね?」
「ホテルのアメニティをブラックローズ社の化粧品にするという事ですよね?…本当にそれだけですか?…なにか私に隠していませんか。」
「……」
玲也は少しの間沈黙したが、少ししてフッと小さく微笑んだ。
「唯ちゃんには嘘はつけないね…でも、理由は…ごめん。言えないんだ。」
玲也はすまなそうに私の前で頭を下げたのだ。