迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
雲一つない青い空。
その青に吸い込まれるように飛行機が飛立っていく。
塵ひとつ付いていない大きな窓ガラスはその存在を忘れてしまいそうだ。
ここは空港のVIPルーム。
今日ここで玲也のお義父様と会うことになっている。
指定された時間通りに到着した私達に、VIPルームのアテンダントは飛行機の遅れを伝えた。
白で統一された室内には大きなテーブルとゆったりとしたソファーが置かれている。
私はソファーに浅く座り、背筋を伸ばした。
防音ではあるが、飛行機の飛び立つ大きな音が微かに聞こえる。
静かな室内で、自分の心臓の音がトクトクと鳴り、緊張で手が冷たくなる。
玲也は私の緊張に気が付いたのか、そっと私の手を握った。
「緊張しているね。…大丈夫だよ。」
アテンダントは15分ほどの遅れと言っていたが、待っているときの時間はとても長く感じる。
少ししてドアをノックする音が聞こえた。
トクトクと音を出していた心臓が大きく跳ねる。
静かに開いたドアからは、案内のアテンダントに続いて、長身の男性が入って来た。
分ってはいたが、玲也の父親はフランス人だ。
失礼の無いように、マナーや挨拶は学んできたが緊張で頭が真っ白になる。
しかし、幸いなことに妻が日本人であるし、それ以前に日本語は堪能なのだと聞いている。
「お父さん、お久しぶりです。」
玲也がその男性に声を掛けると、その男性は真っすぐに私達へと向かって歩いて来た。
私は恐るおそる顔をそっと見上げた。
すると、そこには映画俳優ではないかと思うような整った顔の外人が立っていた。
しかしよく見ると、当たり前ではあるが、玲也にとても良く似た顔立ちだ。