迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。


「…あらあら、大きな声が聞こえると思ったら、あなた方だったのですね。」


お母さんは私の肩に手を置いて、私が出て行こうとするのを止めた。
そして、部屋の中をゆっくりと歩きながら皆に向かって声をあげた。

「この部屋から出て行くのは、唯さんでは無いわ。」

玲也は驚いたように声を出した。

「お母さん…何を言っているのですか。」

玲也の声とほぼ同時に父親も声を出していた。

「お前…何を言っているんだ。」

すると、母親はふっと小さく笑った。


「あなたは橘の家をどうするおつもりなのですか?私がなにも知らないと思っているのですね。…あなたを見込んで橘の婿に迎えた私の両親が泣いていますよ。」


「なっ…なにを…言っているんだ。」


玲也の父親は明らかに動揺している。
その証拠に握った拳がふるふると小刻みに震えていた。


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