迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
玲也の母親は一枚の紙を取り出した。
「これは、橘家が所有する土地の権利書です。この中のいくつかは天王寺家に売却されています。…どういうことか分かりますか。」
父親はさらに動揺したように声を裏返しながら慌てた口調で声を出す。
「た…た…たまたまだろ…俺は知らない。俺を疑っているのか。」
「天王寺家はリゾート開発に橘家が所有する土地が欲しかった。そこで、まずあなたを買収する方法で手に入れることにしたようですね。現に土地の売買が行われると、あなたの個人口座にどこからか入金があるのは調べさせたわ。しかもかなりの金額のようね。恐らく天王寺家からの賄賂だったのでしょうね。」
「ちがっ…違うぞ!言いがかりはやめてくれ。」
玲也はその話を聞いて、父親に向かって声をあげた。
「だからあなたは天王寺家との縁談を進めたかったのですね。天王寺家と手を組むことで自分の不正が暴かれないようにしたかったのですね。」
玲也の母親は静かにぽつりと呟いた。
「あなたはもう終わりね…さようなら。」