迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
青柳君は玲也の血を見て恐くなったのか、その場から逃げるように立ち去ろうとしたが、その時、後から遅れて入って来た瀬谷さんと警察官らしき人に取り押さえられた。
「唯ちゃん、遅くなってごめんね。恐い思いをさせてしまった。」
玲也はそう言いながら、自分の着ていたジャケットを脱いで、私の肩にかけてくれた。
しかし、ナイフで切れた手からは、ぽたぽたと血が滴り落ちている。
「玲也さんこそ、こんなに血が出てしまって…私のせいで…ごめんなさい。」
玲也は大きく首を横に振った。
「唯ちゃんに怪我がなくて良かった。唯ちゃんが怪我をしたら、僕の心はこの傷の何千倍も痛んだよ。それから考えれば、このくらい大したことは無い。」