迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
玲也の顔を見て安心したのか、自然と涙がポロポロと流れ出した。
「玲也さん…ありがとうございます。」
「遅くなってごめんね。恐かったね。」
玲也は私の頭を優しく撫でながら微笑んでくれた。
涙を止めたいのに、さらに涙は大粒となり流れ落ちる。
しかし、なぜ玲也はこの場所が分かったのだろうか。
こんな山の中へどうして助けに来られたのだろう。
「…玲也さん、どうして…この場所が分かったのですか。」
すると近くにいた秘書の瀬谷さんが、代わって話を始めた。
「CEOは青柳が変な動きをしないか事前に私立探偵へ依頼していたのです。すると、数日前に青柳は下見なのか、この別荘に来ているんです。怪しい青柳から目を離さないように、後をつけさせていたのです。」
「それで、この場所が分かって助けに来てくれたのですね…ありがとうございます。」
玲也はゆっくりと頷いた。
「探偵から、唯ちゃんが連れ去られたと報告があった時は、心臓が痛いくらい締め付けられたよ。どうやってここまで来たか記憶ないほど焦ったが、唯ちゃんが無事でよかった…でも…無事じゃないか…ごめん。」
玲也は私の肩にかけたジャケットの前を見えないように閉じてくれた。
「大丈夫です。怪我もしていないし…」
私は青柳の唇の感触が急に蘇り、手の甲で唇をごしごしと拭った。
(…気持ち悪い…)
すると、それを見た玲也は私の手を口元から離すと、私の唇に優しく口づけたのだった。
私は何が起こったのか分からず、頭がパニックになりそうだ。
優しい口づけは、青柳から受けた強引な口づけを消してくれているように感じる。