迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。

玲也を出迎えようと玄関に向かうと、歩いて来た玲也と廊下でばったり鉢合わせとなる。

少し驚いた表情の玲也。


「唯ちゃん…早くから起こしてしまったようだね。休日なのにごめんね。」


玲也はそれだけ言うと、私の横を通り自分の部屋に行こうとした。


「あの…玲也さん。私を避けていますか…もしかして…勢いで私に言った言葉を後悔しているなら、気にしていないので大丈夫ですよ。…あの時は私を慰めてくれようとしたのですよね。」


私は無理に作り笑いをしながらハハハッと笑って見せた。
すると、玲也は私を後ろから抱き締めたのだった。


「唯ちゃん…ごめん…僕はあの事件以来、なんだか不安になって君を避けてしまったようだ。僕が告白してしまったことで、君が住みづらくなってしまうのではないかと思ったんだ。重い男だと思われたくなくてね…。」


私は後ろから抱き締めている玲也の方に自分の向きを変えると、玲也の胸に抱き着いた。


「玲也さん…よかったぁ…私は玲也さんに嫌われてしまったと思っていたので、すごく不安でした。」


玲也の顔は見えないが、心臓の鼓動が大きく音をたてている。


「唯ちゃん…これからは嘘ではなく、本当の恋人…いいや…婚約者になってくれるのかな。」

「…はい。よろしくお願いします。」


玲也は私を抱きしめる腕に力を入れた。
そして、次の瞬間私の唇に優しい玲也の唇が重なった。
触れるだけの優しいキスだが、玲也が触れている唇が熱く溶けそうだ。


「我慢していたけど…唯ちゃん…このままべッドに連れて行くね。」


玲也は私を抱き上げ、自分のベッドへと歩き出した。
抱き上げられた玲也からは、ジムでシャワーを浴びた石鹸の香りといつものコロンの香りが混ざり合って、頭がクラクラするような大好きな匂いがする。


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