迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。

これで全てが分かった。

玲也が婚約を断る理由は言えないと言っていたのは、本郷と京子の関係を皆に言うことが出来なかったからだったのだ。
私は思わず声を出した。

「天王寺さん、本郷さん、おめでとうございます。お幸せになってくださいね。」

すると本郷が初めて重い口を開いた。

「橘さん、そして花宮さん、前回はご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。不甲斐ない私は京子との結婚を言い出せずにいたんです。しかし、本当の気持ちを京子の両親に伝えたら、驚くことに喜んでいただけて…お二人が私に勇気を出す機会をくださったのです。今では本郷家は天王寺家に仕えておりますが、古くから縁の深い家柄なので、結婚も問題ないと言って頂けました。」


本郷は、眼鏡の奥の美しい切れ長の目から涙が流れ落ちた。

そして玲也に深々とお辞儀をしたのだった。



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