迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
真紀は私の方を振り返り、睨むような目をした。
「あんたの作った食事なんて食べたくないわ!」
言葉を吐き捨てるようにしながら、真紀はソファーにドカッと座り腕を組んで目を閉じた。
私は食べてもらえないかも知れないと思ったが、もう一つ小分けにされた冷凍のカレーとご飯を取り出し温めた。
「ご迷惑かも知れませんが、カレーライスよろしければお召し上がりください。私はゲストルームの用意をしてきますね。」
真紀の使うゲストルームの用意を終えリビングへ戻ってみると、真紀は先程と同じ場所に座っていた。
しかし、カレーライスのお皿を覗くと、そこにはカレーライスがなくなっており、空になったお皿が置いてあったのだ。
何も無かったように座っている真紀だが、なんだか少し可愛いと感じた。
真紀に気づかれぬようにしたが、思わず微笑んでしまう。
少しすると真紀は無言で立ち上がり、用意したゲストルームに入って行ってしまった。
玲也が帰って来たのは、真紀がゲストルームに入ってから1時間くらい経ってからだ。
「唯ちゃん、ごめんね。…真紀が来ているのかい?」
玲也は玄関の靴を見て真紀が来ていることに気が付いたようだ。
「はい、今はもうゲストルームです。きっとお疲れなのかも知れませんね。」
私の言葉を聞くと玲也はゲストルームのドアの前に向かった。
「おい!真紀、ドアを開けるぞ!」
玲也の呼びかけに返事がない。
玲也はドアを勢いよく開けた。
そこには、ベッドに入り気持ちよさそうに寝息を立てる真紀がいたのだった。
真紀は玲也の妹なので、その顔は天使のように美しい。
よく見ると玲也によく似ているではないか。
玲也は真紀の姿を見て呆れたように息を吐いた。
「まったく…世間知らずというか…困った妹だよ。」
私はそんな玲也に微笑みながら伝えた。
「でも…なんだかとても可愛いですね。天真爛漫でとてもお兄様が大好きな女の子という印象ですよ。私は真紀ちゃんが愛おしく見えてきました。」
「唯ちゃんは優しいな…。」
玲也は文句を言いながらも、真紀の掛け布団を直していた。