捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 冒険者としての生活も長いらしく、野営でもまったく戸惑う様子は見せていなかった。てきぱきとテントを張り、食事の用意も自ら手を動かしていた。
『野営って嫌いなんですよね。硬いところで寝ないといけないし』
 と、顔をしかめてはいた。それが採取専門の冒険者として働いているという理由の一つでもあったらしい。
 けれど、好きか嫌いかと慣れているかいないかは別問題。彼女は立派に冒険者としての経験は積んできている。
 このまま、この街にとどまってほしいと願うのは、間違いなくクライヴのわがままだ。クライヴ自身、いつまでもここにいるわけにはいかないのだから。
 
 * * *
 
 クライヴと偶然出会ってから一週間後のこと。この一週間、森の中に一泊して遠出し、薬草採取を頑張った。
 さて、今日の依頼を確認しようかと冒険者組合に入ったらそこは大騒ぎになっていた。
 カウンターに詰め掛けているのはどうやら薬師達らしい。冒険者組合の中に薬草の香りが漂っている。
「何があったんですか?」
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