捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 週に二回しか組合の治療所での手伝いはしていないが、どうせなら近い方がいい。思ってもいなかった好条件の物件をすぐに見つけることができそうで頬が緩んだ。
「でしょう? あ、でもここはだめだわ。調理設備がないんだった。ごめんなさい、調理設備のある部屋は埋まってるんだったわ」
「それはひどいわ!」
 ちょっと、いやうんと期待したのにひどい。半分冗談でむくれてみせる。
「うーん、ごめんなさい。今のは私の失敗ね」
「自分で不動産屋回って探してみた方がいいかなあ?」
「一軒家ならあるんだけど」
「は?」
 部屋を借りるかどうかという話なのに、なぜ、一軒家が出てくるのだ。
 たしかに一軒家なら、庭で家庭菜園を楽しむとか、花の栽培を楽しむとかできるだろうけれど。アルディと契約しているから、豊作間違いなしだ。
「一軒家は無理だわ。予算的に」
「格安よ、格安。先ほど薦めようと思っていた部屋と大差ないもの。ただねぇ――出るのよねぇ……」
「出る?」
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