捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 レオニード以外に付き添ってもらう必要性は感じなかったけれど、三人そろってきてくれるのなら心強い。彼らはイオレッタの秘密も知っているし。
「じゃあ、組合長に調査の報告をしてくるから、ちょっと待っててくれ」
 クライヴに言われて、イオレッタはうなずいた。
 彼らは組合長から直々になんらかの依頼を受けて動いているみたいだ。さすがB級冒険者というところだろうか。
 ホールに並んでいる椅子のうち一つを選んで座る。手の中で鍵を弄んだ。
(平和に過ごせるのが一番よね。うん、ここで暮らすのも悪くない……家を借りることにして正解だったのよ)
 家族とは縁を切った。国境も越えたから、イオレッタを連れ戻しに来る可能性は低い。
 いや、あの家を追い出されたのだから、彼らもイオレッタのことはもう死亡扱いなのだろう。
 生家にいた頃は、常に息をひそめるようにして生きてきた。父親の機嫌を損ねない様に。婚約者の機嫌を損ねない様に。
 けれど、外に出て自由の味を知ってしまった。冒険の楽しさを知ってしまった。
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