捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
(たくさんある……!)
 思っていた以上に、蔵書の数が多い。それに、種類も豊富だ。
 クライヴが言っていたように、流行りの小説まで並んでいる。
(ゼルマにも読ませてあげたいわねぇ……!)
 ゼルマが生きていた頃は、こんな立派な図書館はなかったそうだ。ここで読んだ本の中でゼルマの趣味に会いそうなものがあれば、買ってもいい。今は広い家に暮らしているし。
 レシピ本や、家事の方法が掲載されている本も、このあたりで採取できる薬草についての本も興味深い。
(――でも、今日は休みって決めたし)
 ロマンス小説の本を二冊抱えて席を取ろうとしたけれど、いくつか並んでいるテーブルはほとんど埋まっていた。
 相席できそうなテーブルならあるけれど、いきなり他の人も使っている席に着くのは気が引ける。
 どうしようかと視線を巡らせた時、視界の隅で何かがひらひらとした。そちらに目を向けてみれば、テーブルに頬杖をついたクライヴが、もう片方の手で手招きしている。
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