捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 彼の使っているテーブルには、他に座っている人もいない。本を抱えたまま近づくと、向かい側に座るよう合図された。
(私が席探しているの、気がついていたんだ……)
 ありがたくその席に座りながらちらりとクライヴの方を見れば、鮮やかな色合いの絵が描かれたページが開かれていた。魔物の姿を正確に写したもののようだ。
 テーブルの上には筆記具も置かれていて、メモを取っているようだ。こちらに背表紙が向けられている本は、近隣の遺跡についてのもの。
(魔物の生態を調べてるってことかな……?)
 冒険者組合にも、こういった本は置かれているが、組合に置かれているものよりも分厚いので、詳細な内容が記されているのだろう。
 イオレッタが座るのを確認したら、クライヴは再び書物に目を落とした。
 真顔でページを見つめ、何かノートに書き留めている。唇は固く結ばれていて、生真面目な表情だ。
 クライヴのその様子から、目を離すことができなくなる。心臓が高鳴りかけるのを、服の上から胸に手を当てることで抑えた。
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