捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 彼の向かい側で、流行小説を開くのは少し気が引けたけれど、いったんページを開いてしまえばあっという間に物語の世界に没頭していた。
 二冊目を読み終えてから目を上げてみる。
クライヴと目が真正面からあってどきりとした。いつから見られていたんだろう。物語の世界に没頭しすぎて、変な顔になっていなければいいけれど。
 外を指さしたクライヴが、「出るか?」と目線で問いかけてくる。うなずいて、本を元の場所に戻したら、彼は入り口のところで待っていた。
「こんにちは、クライヴさん」
 図書館の中は私語厳禁なので、これが今日初めての会話である。
「こんにちは――と、雨、やんでるな」
 肩を並べて外に出たら、朝から続いていた雨は上がっていた。
「今日はクライヴさん達もお休みだったんですか?」
「昨日まで三日ほど出かけてたから、今日は休みにした。タデウスは武器の手入れをするために武器店に行ってるし、レオニードは神殿に行ってる」
「なるほど」
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