捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 イオレッタが精霊と通じることができるようになった頃から、母はイオレッタを直視しなくなった。あとから考えれば、祖母の力を受け着いたイオレッタに対して劣等感のようなものがあったのだろう。
「かわいそうな子。あなたのことなんて、誰も愛さない……おばあ様もそうだったでしょう?」
 母の言葉に、祖母の顔を思い浮かべる。
 祖母の背中はいつもぴしりと伸びていた。
 けれど、イオレッタは祖母の顔を思い出せなかった。いや、思い出せるのだけれど、後ろ姿の印象の方がはるかに強い。
 魔力で縛らずに精霊と通じることのできる精霊師。それゆえに、祖母の周囲には多数の人が集まった。祖母の力による恩恵を期待して。
 祖母は精霊達と対話し、貴族達の願いをかなえるのに忙しく、娘にも孫にもさほど興味を見せなかった。
 祖母からしたら、生まれた娘が「精霊使い」としての才能さえ持たなかったことが許せなかったのだろう。母が精霊使いとしての力を自ら封じていたことにすら気づくことなく。
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