捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 うっとりとトラヴィスの前で微笑んで見せる。シャロンのこの微笑みを見るためなら、いくらでもがんばれそうな気がする。
「ボーレンはよくやっているのね」
「ああ、もちろん」
 先ほど、ボーレンが反抗してきたことには口を閉ざしておく。わざわざシャロンの前で自分の弱みを見せる必要はない。
 ベルライン家の領地が栄えているのは、精霊使いである領主一家が領民の畑をまめに手入れしているからだ。
 なぜ自分が畑の世話をしなければならないのだと思わないわけでもないけれど、シーズンには王都で華やかな生活を送ることもできる。領地を大切にするのは領主として当然のこと。
 実家にいたら、領地の面倒をみるどころか、家で肩身の狭い思いをしていなければならなかったのだから、こうしてここに来ることができてよかったのだ。
「トラヴィス様の精霊は、ちゃんと主の言うことを聞いて偉いわ」
 むぅ、と頬を膨らませながらシャロンは続けた。もう、子供ではないのだからその癖はやめさせなければ。
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