捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 イオレッタの隣にいた頃は愛らしいと思っていたけれど、早くもその子供らしさを面倒に感じつつある。
 とはいえ、トラヴィスが伯爵になれるのはシャロンあってのこと。シャロンの機嫌をそこねるわけにはいかない――まだ、今のところは。
(俺の時代になったら、何もかも変えてやるつもりだ)
 幸いにもシャロンはあまり頭が回る方ではないから、トラヴィスが好きなようにやっても文句は出ないだろう。シャロンが愚かでいる間は愛してやろう。
 この地を栄えさせ、ベルライン家をますます発展させる。そうしたら、自分を見下してきた兄達を見返すこともできるだろう。
「イオリアは、言うこと聞いてくれなくて。面倒だったから、魔力で縛って言うことをきかせたわ」
「今、何て言った?」
「イオリアが言うことを聞いてくれないの。変ね、この間まではちゃんと言うことを聞いてくれたのに――午後からは、こちらの畑に水を撒いてやらなくてはね」
 満足げな笑みを浮かべながら、シャロンは畑を見回す。
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