捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして

　そのシャロンの隣で、トラヴィスは嫌な予感がするのをぬぐえなかった。次期当主夫妻の精霊が、そろって言うことを聞かなくなっている。
（――いや、気のせいだろう）
　そう思い返すと、トラヴィスは昼食のために屋敷に向かって歩き始めた。

　＊　＊　＊
　
　一週間後。イオレッタは再びスィアの町を訪れていた。
　大精霊が精霊神に昇格したというのだ。戻ってきた精霊神は、一度だけ精霊使い達の前に姿を見せたらしい。祠を作ってもらったことを大変喜んでいたそうな。
「すごい盛り上がってますねー！」
「新しい神が生まれる現場に立ち会うってそうそうないもんな」
　イオレッタ達も、代官との話を終えてから組合に報告しただけ。別にあちこち言いふらしたりはしていなかったけれど、それでも噂は広まるものらしい。
　スィアの町では代官が先頭に立って祭りを開くことになったそうで、町中にはたくさんの人が集まっていた。