捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 広場には楽器を持ち出している人もいて、もう飲んだり踊ったり大騒ぎだ。これをいい商機と見込んだのか、屋台を出している人達もたくさんいる。
「俺は北の方を見てくる」
「私は、南の方を見てきます」
 タデウスとレオニードは、なぜか別々の方向に向かって歩き始めた。せっかく四人で来たのに。
「じゃあ、私はあっちを――」
 と、別の方向にイオレッタも歩き始めようとしたら、腕に手を置かれた。真面目な顔でクライヴはこちらを見ている。
「女性一人でうろつくのは危険だ」
「そのあたりは、大丈夫だと思いますけど……」
「イオレッタに守りが必要ないのは知っている。それでも、一人で歩かせるわけにはいかないだろう?」
 なんて律義なと、感心している場合ではなかったか。
 クライヴも自由に街中を歩きたいだろうに、イオレッタのお守りで大丈夫なんだろうか。
 けれど、その言葉を口にすることはできなかった。
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