捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 肉の油が垂れて手についてしまっている。上手に肉を食べることのできない子供みたいだ。
 みっともないな、と思いながらクライヴの手から腕を引き抜く。えいや、と残りの肉を口に入れてから、串はちょうどそこにあったゴミ箱にポイ。ハンカチを取り出して、丁寧に手をぬぐう。
「あー、歩きながらじゃ食べにくかったか。悪かった、そこまで気が回ってなかった」
「いえいえいえ! そういうんじゃないので……、慣れてないのは慣れてないんですけど」
 家を出るまで、こんな風に食べながら歩くなんてしたことなかった。
 一人前の冒険者になったつもりでいたけれど、まだまだ甘かったらしい。
「何を考えてたんだ?」
「ええと、ですね」
 クライヴとの関係をどう呼べばいいか考えていたなんて、口にすることはできなかった。ちらり、と空を見上げる。
 夜空には、たくさんの星がきらめいていた。今日は月が姿を見せない日だから、ますます星がきれいに見えるのだろう。
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