捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
「冒険者になって、よかったなって――そう思ってたんですよ。家じゃ、こんな風に歩きながら食べるとかしたことなかったので」
「家、か――」
「もう、家はないんですけどね。だから、一人で暮らしてるんですけど」
 と言ってから、これでは家族がイオレッタ以外全員死んだと言っているようなものだな、と気付く。訂正しようとしたけれど、その必要もないかもしれない。イオレッタの家族はもういないのは本当のこと。一人で生きていくと覚悟を決めている。
「まあ、人生いろいろあるもんな」
「そうそう、いろいろあるんですよ」
 うっかり口を滑らせかけてしまったけれど、冒険者は互いのことには必要以上に口を挟まないのが鉄則だ。
 こう言っておけば、クライヴもイオレッタの過去について聞こうとはしない。
彼はそのあたりちゃんとわきまえているようだし、イオレッタとの距離を一定に保とうとしてくれているのもわかる。
(きっと、家に帰ったら婚約者とかいるタイプなんだろうな)
< 190 / 320 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop