捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 どうやら貴族の家系らしいとあたりをつけてしまえば、そのあたりのことも容易に想像できる。イオレッタには好意的――たぶん恋愛感情的な意味ではないと思う――でありながらも、一定の距離をちゃんと保とうとしてくれている。
 今の距離を、これ以上縮めるわけにはいかない。
「そうだ、大砲を撃つらしいぞ。近くまで行ってみるか?」
「湖の精霊神にささげる祝砲ですね! 行きましょう」
 新たな神の誕生を祝い、代官の屋敷で祝砲を撃つことになっているそうだ。クライヴが話題を変えたのに、イオレッタも乗ることにした。
 
 * * *
 
 特等席である代官の屋敷に入ることができたのは、クライヴ達が彼らの悩みを解決したからである。クライヴの身分は関係ないだろう、たぶん。
 代官が領主であるクライヴの顔を知らないということはないが、ここでは一冒険者として扱ってくれるように頼んでいる。
「意外と音が響くんですねぇ……」
 祝砲の音を間近で聞いたイオレッタは両手で耳を覆った。大きな音で、耳の奥がキーンとなったようだ。
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