捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 精霊は自分とは縁のないものと思ってきたし、それに不満もなかった。けれど、今だけは口惜しい。精霊達がどうしてイオレッタに惹かれるのか、話を聞くこともできただろうに。
 いや、違う。たぶん、イオレッタと同じ光景を見ることができないのが悔しいのだ。クライヴの目には、何も見えない。
「クライヴはわかります?」
「魂がどうこうっていうのはよくわからないけどな。魔力が集まっているのはわかる」
 魔術師としての素養を持つクライヴではあるけれど、精霊の存在を感じることはできない。でも、たくさんの魔力を持つ存在が集まっていて、それが喜びに満たされているのは感じることができる。
「精霊神の誕生――か」
 ふと、口から零れ出た。あらたな神の誕生は、この国にどんな変化をもたらすことになるのだろう。
「すごいですねぇ、私達、何千年に一度の機会に立ち会っているんですよ!」
 それだけ口にすると、イオレッタはまた湖の方に目をやる。その横顔に目を奪われた。
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