捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 今日は一日、のんびりするつもりだったから、まだ、予定は立てていない。頼みがあるというのなら、まずは話ぐらいは聞こうではないか。
 お茶をいれようと踵を返しかけたけれど、クライヴの次の言葉で動きを止めた。
「助かる! あのな、国境にドラゴンが出た」
「はい?」
 助かる、はわかる。だが、そのあとなんて言った。
 ドラゴン? 国境に?
「大変じゃないですか! 国境ってすぐそこですよ!」
思わず大きな声が出た。ドラゴンなんて、めったに見られるものではない。
魔物内の権力争いにおいて、最上位にいるのがドラゴンだ。何百年どころか何千年も生き、人の言葉を解し、丈夫な身体と豊富な魔力から遠慮なく攻撃魔術を放ってくるというアレ。
 おまけに、基本的は空を飛べるのだからもっと始末に負えない。依頼の遂行中、ドラゴンに会ったら、すかさず回れ右しろと言われるほどの魔物だ。
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