捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
「イオレッタは精霊と話ができるからな。ドラゴンの様子を遠くからうかがうのに向いてるだろ?」
「あー。湖の精霊神と同じパターンですね」
 頼られれば悪い気はしないのがイオレッタである。
 たしかにドラゴンと会話をするのに、相手が友好的なのかそうではないのかを先に確認しておくのは必要だ。
 精霊達ならそのあたりもなんとなく察することができるだろう。ドラゴンと対話もできるかもしれない。
「お出かけ?」
「わっ!」
 落ち着きを取り戻したゼルマが、天井から逆向きに生えていた。イオレッタはだいぶ見慣れた光景なのだが、『ニバーン』の面々は初めてである。
 タデウスが腰の剣に手をやりかけた。
「ちょ、駄目です――! ここで剣を抜くのはなしですよ!」
「……申し訳ない」
 気まずそうに頭をかいて、タデウスは座り直した。ここはそう広い場所でもないから、剣を抜かれていたらまずかった。
「ゼルマ、あなたもはしゃぎすぎ――ちょっと出てくるね」
「どうしたの?」
「ドラゴンが、国境のあたりにいるんですって」
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