捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 レオニードとタデウスにもイオレッタへ想いを寄せているのではないかと指摘されたことがあるが、今の関係を崩すつもりはないのだ。いずれ、王宮に戻らねばならないのならなおさら。
(俺は、王宮に戻りたいのか――?)
 そう、自分自身に問いかけてみる。
 王座に対する野望はあるのだろうか。答えは否、だ。
 自分よりも兄の方が適任者だ。兄に頼まれれば手を貸すのはかまわないが、兄はそんなつもりもないだろう。
「まあいい。俺がここにいるのは、余計な争いを生まないため、だな」
 クライヴにそのつもりがないとはいえ、それを貴族達が真正面から信じなければならない理由もない。いや、信じているとか信じていないとか、そんなものはどうでもいいのだ。
 大切なのは、クライヴが王座を狙うには遠い地で生活すること。そして、できることならば王宮には戻らないこと。
 成人前に一度世間を周り、見聞を広げるというしきたりをいいことに、王宮を離れてもう何年も戻っていない。
< 231 / 320 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop