捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 王族がロシードを去るまで、しばらく離れていた方がいいのならそうした方がよさそうだ。
「それで正解だな。スィア湖の方に行ってみるというのはどうだ? 王族はセルヴィハに会いに来るそうだからな」
「わかりました。そうします。精霊神様にご挨拶するっていうのもありですよね」
 スィア湖の精霊神は、最近神となった精霊だ。
 祠はたいそうお気に召したそうで、湖は前にもまして豊かになったという噂。
「そうだな、そうしてもらえると俺としてもありがたい」
「ご忠告、ありがとうございます。ゼルマには申し訳ないですけど……」
 あいかわらずゼルマは家から一歩も出ることはできない。
 以前は出かける度に文句をつけてきたけれど、最近では落ち着きを取り戻しつつある。
『よく考えたら、生きている時もそんなに外に出たいタイプじゃなかったわ……』
 というのは、ゼルマの言葉。
 今の環境も、慣れてしまえばそれほど悪いものでもないそうだ。そのかわり、イオレッタが長期にわたって留守にするのはとても嫌がる。
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