捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
「わかっておる。吾輩は、人間と生活するのは初めてだからな! ただ、飛んだ方が速いのではないかと思っただけだ」
 クライヴの言葉に、セルヴィハは座ったまま器用にふんぞり返る。
(人に交じって生活する、か――)
 実家にいた頃、イオレッタの世界は極端な二つに区切られていた。
 存在を否定されている貴族の娘として家族に虐げられている生活と、ぎりぎり一人前と認められていて、細々と生計を立てている冒険者としての生活と。
 この二つは混ざってはいけないものだった。混ぜるつもりもなかった。
 屋敷を出る時は慎重に、そして屋敷に戻る時も慎重に。家族は、誰もイオレッタの二重生活に気づいていなかった。
 家を出て、ゴルフィアで部屋を借りて――思いがけずロシードまで移動することになって。そして、ようやく息をついてもいいように思えた。
 冒険者として活動していたから、ある程度慣れていたつもりが、自分は全然ダメだったのだと思い知らされたのも彼らと出会ってから。
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