捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 今の生活がとても愛おしいからこそ、下手な行動はとることができない。
 ベルライン家の馬車を見た時、過去に捕まったような気がした。でも、それは気のせいだ。
 イオレッタはこうして、自分の望んだ人生を送ることができている。
「こっちに来るのは久しぶりですねぇ……!」
 イオレッタは、大きく伸びをした。
 湖の精霊が精霊神になるのを見届けた時以来、こちらに来る理由はなかったから、スィア湖を見るのは久しぶりだ。
「俺達はちょくちょく来ていたけどな。イオレッタ、まずは祠だろ?」
 クライヴ達は、依頼を受ける度にこちらに来ていたそうだ。ちゃんと、訪問の度に祠にもお参りしているらしい。
「そうでした、そうでした。ゼルマから預かってきたものがあるんですよね」
 ゼルマからと言いつつ、品物の指定を受けて買いに行ったのはイオレッタである。ゼルマが指定したのは、ロシードの近くのワイナリーが作っているワインであった。
 なんでも、甘みが強く、飲みやすいワインなのだそうだ。
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