捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして

　なのに、湖の上を吹き抜けてくる風を頬に感じると、とても懐かしくて、涙が零れそうになる。
「すごいな。ここには、こんなにたくさんの精霊が集まっている」
「そんなにすごいのですか？　私は見ることも感じることもできないのが残念ですね……」
　クライヴの言葉に、タデウスは残念そうに眉を下げた。
　レオニードは目に見えない魂を、クライヴは魔力を感じ取ることができる。彼らは精霊を見ることはできなくても、精霊の魔力は感じることができる。
　タデウスはそのあたりの能力には恵まれていないから、ここに来ても特に感じるものはないようだ。
「ああ。新たな神の誕生を祝う精霊達が集まっているんだろうな」
　大精霊が精霊神になったのは数か月も前のことなのに、まだ集まっているのだろうか。イオレッタが素直にその疑問を口にのせると、セルヴィハは大きな口を開けて笑った。
「人間の時間と精霊の時間を同じに考えるのは間違っているぞ。十年ぐらいこの祝いは続くだろうな」
「そんなに！」